2022 晩秋の星空を撮る





おうし座流星群 - 北群 -






12/4開催のαアカデミー2講座のガイドブック入稿を済ませ、週明けには印刷所から納品される予定。
あとはプレゼンの準備、、、なのだけれど、外に出てみると思いの外星空が広がっている。月のない新月期の晴れだけに、今夜は撮れるかもしれない、と大急ぎで準備をして出かける。
ときどき薄雲が広がるが、思ったほど寒くない。それよりも結露が酷い。予想以上に空気中の水蒸気量が多いようだ。

まあ撮れるところまて撮ってみるか、と覚悟を決めて撮影を始める。

しばらくすると視野の上を明るい光が横切った。
おおっ何だ?車のLEDヘッドライトじゃないよな、と頭を上げると一筋の流星が流れたところだった。光の筋はフラッシュのような閃光を連続して2回辺りを明るく照らして消えていった。

ゆっくりした流れ方はおうし座流星群だ。経路の終わり近くに2度爆発していることがわかる。
放射点はプレアデス星団付近で経路から見ておうし北群だ。使用したレンズは超広角14mmでオリオン座と比較すると経路の長さがわかる。それにしても連続したフラッシュ発光には驚かされた。

おうし座流星群はまず南群が、続いて北群が流れ始める。
流星数は多くないものの火球が混じることが知られている。木星の公転周期とダスト密度の高い部分との関係から、今年のおうし座流星群は例年以上に火球の割合が高いと予想されていた。今回撮影した流星もその1つといえるのだろう。



14mm、ISO1000、f2.0、30秒×1枚、Raw、LEE SP-31 ソフト №1使用、マニュアルWB、長秒時ノイズリダクショoff、赤道儀で恒星追尾撮影


2022年11月11日23時16分 揖斐谷
SONY α7M4 + FE 14mm F1.8 GM










晩秋の星空






皆既月食が終わり月が邪魔をして星空が撮れないうちにと、12/4(日)のαアカデミー「篠田通弘の写真講座」の準備を進めている。根を詰めて取り組んでいるガイドブックは、一両日中に印刷所へ入稿する運びまでこぎつけた。B5判オンデマンド印刷・無線綴で、講座Ⅰが56ページ、講座Ⅱが52ページ、2講座合わせて108ページとなる見込み。ほとんど寝ずに制作に当たっているので、あと少し、あと少しと自分で自分に声を掛けている。疲労はほぼ限界に達していたが、21日に無事入稿までこぎ着けることができた。

仕事の合間に星空を見に外へ出た。
皆既月食の夜は思ったより暖かい晩だったが、今やいつ雪が降ってもおかしくない晩秋の装いへと季節は変わりつつある。そろそろ冬タイヤに替えなくては、などと考えながら星空を見上げる。
まだ時間帯が早いので町明かりの光害もあるし、雨が降っていないせいか空気もよどみがち。オリオン座が姿を現していることを確かめて、月が出てくる前にと数枚だけ撮って早々に引き上げた。


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オリオン座が冬の夜空を代表する星座であることに異論を挟む人は少ないだろう。小学校理科でも冬の星座を取り上げるときにはまずオリオン座を取り上げ、そこからたどって冬の大三角へと導く。
そのオリオン座を終生愛したのが冥王星の名付け親の野尻抱影氏だった。

2001年3月11日をもって閉館となった渋谷の天文博物館五島プラネタリウムの星の会で、1975年5月に「星に感じる畏怖」と題して野尻氏は講演している。これが氏の最終講演となった。
氏は講演が終わったあと、次のように言葉を継いでいる。


僕はこの秋に90歳になる。死んだら私の墓所はオリオン座と決めている。あのガンマ星の1インチ半下のところです。そこはベラトリクス、つまりあの美しいアマゾンの女兵士がまもってくれているのです


と言って聴衆を驚かせたという(石田五郎『野尻抱影 聞書「星の文人」伝』(1989年))。

野尻氏は1918年にスペイン風邪で妻の麗を亡くしている。ペラトリクスに妻の麗を重ね合わせているのだろうか。

それにしてもなぜベラトリクスか。
毎年のように夏に8月のオリオンを迎え、秋にオリオンが高く上る姿を見ているとオリオン座で真っ先に上ってくる2等星がオリオン座γ星、ベラトリクスであることに気づいた。そうなのだ、オリオンが上るのをずっと待ち続けた野尻が、真っ先に見たのがベラトリックスだった。ベラトリクスは野尻にとって特別な星だったのだろう。

2016年IAU(国際天文学連合)は Bellatrix をオリオン座γ星の固有名として正式に承認した。
野尻抱影氏のベラトリクスは天文学上の固有名詞となった。
なおアメリカの博物学者アレンは1899年の著書の中で「Amazon star」という別名を紹介している。ベラトリクスはラテン語で女戦士の意だという。


この晩もベラトリクスが先達としてベテルギウスとリゲルを両翼に従えて上ってきたのだった。


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通常なら30秒以内の短時間露光を繰り返し、加算平均コンポジットによって高感度ノイズの低減をはかるところ。今回は時間もないので1枚撮りで作品化した。最近は超広角レンズによる星野・星景写真は、1枚撮りの方がすっきりと仕上がるような気がしている。

屈折望遠鏡はVixenへスペーサー交換に送っているので、まだ手元にはない。これまでは望遠鏡の3枚の錫箔が有効径内に出ていたので放射状の欠けが見られた。これもこの望遠鏡の味かと思ってきたが、リングスペーサーに交換してどうなるか、楽しみにしている。



14mm、ISO400、f2.0、60秒×1枚、Raw、LEE SP-31 ソフト №1使用、マニュアルWB、長秒時ノイズリダクションon、赤道儀で恒星追尾撮影


2022年11月18日22時04分 揖斐谷
SONY α7M4 + FE 14mm F1.8 GM












20221120 (篠田通弘)